近年の歯科治療はMI(ミニマルインターベンション)という考え方が主流となり、簡単にいうと「出来る限り削らずに治療する」という考え方・治療方法になります。他にも「抜かない」「神経を守る」という意味合いもありますが、天然歯を出来るだけ削らないという考え方が最も大きいかと思います。このMIの考え方を取り入れた治療の一つが、コンポジットレジンによる治療です。
コンポジットレジンとは、小さな虫歯や前歯の治療時に用いる樹脂製の素材で、金属やセラミックの詰め物に比べ歯を削る量が少ないことから、低侵襲の治療法として広く知られています。コンポジットレジンはその頭文字をとって「CR充填」と呼ばれれることもあります(文中以下CR充填)。コンポジットレジンを使った治療には保険診療の適応範囲内の治療と、自由診療で行うエステティック(ダイレクト)ボンディングがあります。
治療内容 | 初期の虫歯治療に対するレジン充填 |
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回数・期間 | 1回(1日) |
リスク・副作用 |
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費用 | 保険点数(158+29+128)×2=630点(3割負担の方で1,890円) ※別途初診料or再診料 ※保険点数は改定で変更になる場合があります |
コンポジットレジンという樹脂は、樹脂にセラミックの粒子を混ぜ込んで審美性と強度を加えた歯科の修復材料です。
コンポジットレジン修復は「ダイレクトボンディング」という審美的な自由治療の他、保険治療でも一部の治療使用が認められています。例えばこれまでは銀色の詰め物を入れる必要があった歯の治療が、白いコンポジットレジンで治療できるようになっています。
以前は小さな虫歯でも詰め物が取れにくいように大きく歯を削る必要がありましたが、コンポジットレジンの材料が年々改善されて治療の自由度が高くなり、歯質を余分に削る必要がなくなっていきています。
ただし、コンポジットレジンは治療の全行程を歯科医師が行うため、歯科医師の技術力や再現性により仕上がりが大きく左右されるという特徴があります。歯科医師の技術力によって見た目や強度(取れにくさ)が変わるため、信頼できる歯科医師を見つける必要があります。
などがあげられます。
歯を削る量が少なく、痛みも少ない、まさに良いことづくめの治療のようですが、もちろんこのようにデメリットやリスクもあります。
STEP1
虫歯に感染した歯質や、古く合わなくなった詰め物などを除去します。型取りをして詰め物を作る場合は、詰め物がしっかりくっつくような形を作るために、虫歯とその周りを大きく削る必要がありますが、コンポジットレジンの場合、感染した歯質のみ除去すれば良いので、多くの歯質を残すことができます。
STEP2
専用の接着剤とペースト状のコンポジットレジンを、削った部分に詰めていきます。
STEP3
照射器という機械を使って特殊な光をコンポジットレジンに照射します。数秒〜10秒程度照射することでしっかり固まります。
STEP4
少しはみ出た部分などを削ったり、歯の自然な形になるよう整えていきます。キレイに整ったら、ザラザラした舌触りにならないようしっかり研磨して終了です。
1995年に行われた「歯科修復物の使用年数に関する疫学調査」という論文によると、再治療が必要とされた歯科修復物について、その原因とそれまでの歯科修復物の耐用年数を調べる調査において、レジンによる修復はなんと46.7%が2次カリエス(再発虫歯)が原因だったそうです。これを上回ったのはアマルガムという過去歯科治療でよく使用された水銀で作られた詰め物で、こちらは59.1%もあったそうです。
つまり、コンポジットレジンによる修復後、虫歯が再発するリスクは非常に高いということは言えると思います。
もちろん、これらは20年以上前の調査ですので、材料の改善が進んだ現在では多少結果を異なるかもしれません。それでも「レジン」という樹脂の特徴は大きく変わるものではありませんので、多少は改善されたとしても、二次カリエスのリスクは低くはないと考えておく必要があると思います。
修復物 | 再治療の原因(%) | |||||||
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N | 2次う蝕 | 隣接面う蝕 | 脱落 | 感染根管 | 歯髄炎 | 破折 | その他 | |
レジン | 433 | 46.7 | 13.4 | 7.9 | 8.5 | 8.3 | 3.9 | 11.3 |
アマルガム | 741 | 59.1 | 14.2 | 2.7 | 2.6 | 14.4 | 1.1 | 10.0 |
インレー | 731 | 33.8 | 8.3 | 28.6 | 5.6 | 14.6 | 1.0 | 8.1 |
アンレー | 47 | 21.3 | 4.3 | 12.8 | 42.6 | 2.1 | – | 17.0 |
鋳造冠 | 562 | 14.8 | 0.3 | 17.4 | 27.6 | 3.7 | 7.3 | 28.8 |
バンド冠 | 187 | 8.6 | – | 10.7 | 44.3 | 5.9 | 8.0 | 22.5 |
セラミッ ク冠 | 59 | 13.6 | – | 40.7 | 11.9 | – | 16.9 | 16.9 |
ジャケット冠 | 141 | 7.1 | – | 39.7 | 9.7 | 1.4 | 25.5 | 17 |
継続歯 | 46 | 15.2 | – | 50.0 | 23.9 | – | 4.3 | 6.5 |
ブリッジ | 173 | 21.4 | – | 24.2 | 16.2 | 6.4 | 13.3 | 18.5 |
統計 | 3,120 | 33.1 | 7.1 | 17.0 | 13.4 | 8.5 | 5.5 | 15.4 |
※歯科修復物の使用年数に関する疫学調査より(※1)
※1)歯科修復物の使用年数に関する疫学調査
「二次カリエスのリスクが高い」のであれば、コンポジットレジンではなく二次カリエスのリスクが比較的低い詰め物の方が良いと思われるかもしれません。しかし、実際のところコンポジットレジンと詰め物の治療では歯を削る量が全く異なります。歯質は一度削ると二度と戻らない大切なものですので、より多く歯質を残せるのであれば、コンポジットレジンは小さな虫歯に対する最も有効な治療になると言えます。
コンポジットレジン治療から二次カリエスにならないように、しっかりとしたセルフメインテナンスと定期的な歯科検診・メインテナンスをすることが重要となります。
金属の詰め物の下にできる二次カリエスはレントゲンにも写りにくく見つけにくいですが、コンポジットレジンの下の二次カリエスは透過性もあり、レントゲンにも写りやすいため比較的見つけやすいといえます。しっかり検診を行っていれば二次カリエスが再発しても、早い段階の治療を行うことで歯の神経を守ることが出来る可能性は高くなります。
歯科先進国、スウェーデン・イエテボリ大学のアクセルソン博士が行った研究によると、人が30年の間にかかる虫歯のうち、80%は二次カリエス(再発虫歯)だそうです。しかし、この博士の歯科診療所にメインテナンスに通った患者の6年間の平均う蝕発生歯面数は、わずか0.2本だったそうです。30年で計算すると、5倍しても1本です。つまり、しっかりメインテナンスを行っていれば、30年間1本の虫歯に抑えることも可能ということです。
もちろん、予防歯科の質や患者様自身のセルフケアにもよりますが、予防歯科が二次カリエスに有効であることは確かです。「コンポジットレジンだから」「詰め物だから」と、歯科修復物を気にするより、虫歯・歯周病にならないための予防歯科に通うことが、お口の健康にとって大切であると考えます。二次カリエスや虫歯、歯周病を防ぐためにも年3〜4回の予防歯科の習慣を見に付けましょう。
三宮アップル歯科
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